■父の被爆体験と重なる
日本現代文学を代表する作家の井伏鱒二先生は、大学時代から交流させていただいた恩師のような存在です。高校時代に文芸部で、大江健三郎や椎名麟三、サルトルなどいろいろな作家の本を読みました。中でも好きだったのが井伏先生で、『黒い雨』(新潮社)はとくに印象に残っている本です。主人公の閑間(しずま)重松の日記に、原爆が落ちた直後の状況がリアルに描かれていますが、父から聞いた被爆体験と重なり、戦争の悲惨さを身に染みながら読みました。
大正15年生まれの父は第二次世界大戦中、海軍兵として広島県呉市にいて、広島に原爆が落ちた翌日、救助のためにボートをこいで広島へ行きました。実際はご遺体の片付け作業になるのですが、あるご遺体を持ち上げようとしたとき、木のパイプがごろんと落ちたそうです。当時パイプを吸うのは大学の先生のような職業の人だったので、「この人は大学の先生だったのかなと思うとすごい悲しい気持ちになったよ」と父が話していたのをよく覚えています。
『黒い雨』について井伏先生は「これは小説だけど、小説としては書けなかった」とおっしゃっていたのが印象に残っています。もちろん、鰻の子が遡(さかのぼ)る希望のあるシーンなどは先生の創作ですが、先生は「物語を作るという感じでは書けなかった」と。重松のモデルとなった方から小説の題材として日記を提供してもらったものの、小説を書くのはつらかったのだと思います。
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February 01, 2020 at 12:53PM
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【私の本棚】作家・江上剛さん 『黒い雨』井伏鱒二著 - 産経ニュース
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