エースはみんなのために、みんなはエースのために-。巨人菅野智之投手(30)が、6回4安打1失点で開幕投手からの12連勝。球団では38年春のスタルヒンを超え、リーグ新記録を達成した。04年、球界再編問題の真っただ中、近鉄岩隈(現巨人)が連勝を重ねたシーズンから16年。コロナ禍で異例のシーズンとなる中、菅野が仲間とともに連勝街道を突き進む。

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“無双”の男が、繰り返したのは感謝だった。菅野は6回4安打1失点の好投で、プロ野球タイ記録となる開幕投手からの12連勝を達成。マイクを手にし、自身の連勝記録の喜びとともに、いつものように支えてくれる仲間への思いを言葉に込めた。

菅野 自分の力だけではどうにもならないこと。後ろで守ってくれる野手であったり、トレーナーさんであったり、いろいろな人に感謝を伝えたいです。

仲間を思えば、自らの限界も突破した。2点リードの5回、岡本の失策を機に背負った無死二、三塁のピンチ。「いつも助けてもらっている分、絶対カバーしたいなと」。大盛をフォーク、田中広を150キロの直球で連続三振。鈴木誠もギアマックスの150キロで右飛にねじ伏せた。

いつもは冷静沈着なエースが「ちょっと力を振り出しすぎてしまって、ちょっとバテてしまった」と苦笑するほどの熱投。“施されたら、施し返す”のはチームスポーツの野球界でも同じだった。

仲間のために、環境面の整備でも先頭に立った。春先、ジャイアンツ球場室内のマウンドを東京ドーム仕様への改良を要望。すでに改良済みの場所もあったが、今では6カ所中4カ所へと増加。外野のブルペンも3カ所が東京ドーム仕様へと変わった。1日のDeNA戦の登板後には、整備担当と東京ドームのマウンドをチェック。集めた投手陣の声を担当者に伝えた。

ファンのためにも、記録を意識する。「1回負けてしまうと記録が止まってしまうので、毎回意識しながらマウンドに上がるのは意外としんどいですけど、そういう期待に応えるのもプロ野球の醍醐味(だいごみ)」と受け止め、力強く誓った。「自分自身も負けないで、シーズンを終えられるように頑張っていきたいと思います」。通算99勝目。プロ野球史上初の13連勝とともに、自身のメモリアルを迎える。【久保賢吾】

▽巨人原辰徳監督(菅野の12連勝に)「これはもうすごい数字ですよ。先発ピッチャーはいくつ貯金ができるかも大事なとこですしね。それが何十年ぶりかなんかでしょ。歴史は物語るところでしょうね。先制されても自分を見失わずにしっかりゲームをつくれる。(5回のピンチは)ランナーを背負った時に慎重に投げる。大事なんでしょうね」