大接戦になった米国の大統領選挙はバイデン前副大統領の当選が確実になっている。通常の大統領選挙では対立候補の敗北宣言を受けて勝利宣言を行う。ところがトランプ大統領は証拠を示さないままに「選挙で不正があった」と主張して敗北を認めていないために、バイデン氏は11月7日に事実上の勝利宣言の演説を行った。両候補ともに7千万票を超える得票があり、バイデン政権が誕生していかに「米国の結束・団結」を強調しても、分断・亀裂の修復は容易ではない。
「自国第一主義」のトランプ政権は保護主義を世界に拡散させるとともに、経済力・軍事力の面で台頭著しい中国とさまざまな摩擦を生じさせて、国際協調を不安定化させてきた。さらに昨年12月に中国で発生した新型コロナウイルスによるパンデミックが全世界に及んでおり、世界中の国々や人々が健康不安や経済不安で危機的状況が生み出されている。
世界の不安定化が進行する中で、アジアに巨大経済圏の協定合意という喜ばしいニュースが飛び込んできた。11月15日に日中韓、豪州、ニュージーランド、ASEAN(東南アジア諸国連合)の15カ国は、自由貿易圏構想「地域的包括的経済連携(RCEP:アールセップ)」協定に関する首脳会合で正式に合意し、協定に署名した。発効すれば、世界人口の約3割、GDP(国内総生産)の約3割を占める巨大経済圏が誕生することになる。
RCEPの交渉は8年前に始まり、当初はインドも参加していたが、この協定によって中国から安い製品が流入することへの懸念が根強いために昨年交渉から離脱。もともと中国をけん制するために日本がインドを引き入れた経緯があったが、コロナ禍の拡大で各国経済が大きな打撃を受け、発効優先が主流になり妥結した。
日本や豪州は高い自由化を求めたが、中国やインドは国内産業保護の立場で低い関税撤廃率を主張して交渉が長引いた。トランプ政権による「自国第一主義」によって米国と中国の通商摩擦が激化しており、中国はアジアでの米国不在を逆手に取って、アジアへの関与をより一層強めるためにRCEPの妥結に動いたといわれる。
一方で米国の国務省・国防総省は、日米、豪州、インド4カ国で中国包囲網を形成し、アジアにおける中国膨張を抑えるために軍事演習を実施している。日本では菅政権が誕生しているが、米国との同盟関係を重視しつつ、一方で台頭著しい中国との協調関係を良好化させることは容易ではない。バイデン政権が誕生しても、中国に対しては厳しい政策の遂行が想定され、日本にも軍事的協力が求められる可能性が高い。
菅政権はコロナ禍の収束を前提にして「インバウンド観光立国」政策の展開を考えているが、その前提としてアジアにおける国際協調や平和的安定が不可欠になる。そのため菅政権には相当程度に高度で周到な外交力・スマートパワーの発揮が求められている。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)
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November 23, 2020 at 10:00AM
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【私の視点 観光羅針盤 264】アジアの巨大経済圏への期待 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三 - 観光経済新聞
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