「母親」が忘れていた感覚
それは、実に久しぶりの感覚だった。 「美穂ちゃんに会えて嬉しいよ。相変わらずきれいっていうか……」 大学時代ぶりに再会した長谷川透は、美穂の古い記憶よりも丸みを帯びた輪郭をしていて、顔にもあちこちに小じわやシミが目立つ。 けれどそれはそのまま自分も同じだろう。ハタチの頃の自分しか知らない男が突然40歳目前の女を目にして、一体どんな落差を見出すのかと思うと恐い。 なのに、うまく目が逸らせない。目が乾いて、瞬きの数だけが不自然に増える。 「むしろすごく女っぽくなったね。でも優しい雰囲気は変わってないなぁ」 そう言って自分を好奇心たっぷりに見つめる彼の瞳こそ、サークルで人気者だった青年の頃のまま何も変わっていない。 「美穂ちゃんみたいなしっかり者と違って、絵梨香たちはどうせ遅れるだろ。お酒大丈夫?スパークリングでも飲もっか」 透はさっと手を挙げると、素早く注文を済ませた。 「そのワンピース似合ってるね。そういえば昔からおしゃれだったよね」 そして再び美穂に向き合うと、ニコリと微笑む。今度はあからさまに目を逸らしてしまった。 夫以外の異性と二人きりで会話するなんて一体何年ぶりだろう。 恐い、くすぐったい。いっそ逃げ出してしまいたい。 意思に反して気分が高揚してしまわないように、美穂は過去の経験を必死に手繰り寄せてこの感覚を思い出す。そして、気づいた。 自分は随分と久しぶりに、「女の子扱い」されているのだと。
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December 14, 2020 at 05:03AM
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私の幸せは「何もしない」こと。夫に養われる妻が払う人生の代償(webマガジン mi-mollet) - Yahoo!ニュース
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