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青山七恵さん「私の家」インタビュー 家族はつかれ続ける餅のごとし|好書好日 - asahi.com

 家族だからわかり合えるわけではない。家族でも帰りたい家が違うかもしれない。青山七恵さんの『私の家』(集英社)は、家を主題に3世代にわたる家族を描いた長編だ。

 祖母の法要から物語は始まる。27歳の娘・梓は同棲(どうせい)相手と別れ、法要で帰省したのを機に実家に居着く。還暦間近の母・祥子は言葉数の少ない陰気な娘にいらだつ。法要でも孤高だった大叔母・道世が梓は気になり、車を走らせて会いに行く。過去にさかのぼり、様々な出来事を経ても、この家族は微温な関係にある。

 執筆のきっかけは親族の法事に出たこと。母が書いてくれた家系図で、親族とは必ず何らかの関係性で結ばれていると視覚的に実感したことも大きかったという。「一人暮らしが長くなり、自分一人で存在しているような気持ちになっていたけれど、私もこの人たちの連鎖の一つなんだなと思いました」

 執筆を始めた頃、世界各地から小説家や翻訳者を招くプログラムに応募して、フランスのサン・ナゼールという街で2カ月を過ごした。「家の所有権はない。私の家具も何一つない。それなのに遠出して戻ってくると、私の家だ、と思ってしまう。私の家は人生に一つというものでもないし、心の持ちようでも変わる」

 芥川賞を受けた「ひとり日和」をはじめ、穏やかな日常の丁寧な描写が評価されてきた。今作もそう。盛り上がりすぎると、あえて「ならす」そうだ。「起承転結で言えば、この世に出現するという圧倒的な『起』のあと、ほとんどの人は『承』が何十年も続く。その間に実は無数のクライマックスがあると思う。散歩したり料理したりぼーっとしたりするときこそ、人生のクライマックスなのかもしれない」

 家族について考え続けた執筆後、「家族餅理論」を思いつくに至った。家族とは、見えない杵(きね)でつかれ続ける餅ではないか、と。個装された和菓子ではなく。「どんなに仲が悪くても同じ家にいると餅のような状態。異物が入ってきてもこね混ぜて一つになり、大きなものが抜けても残りでつき直されてまた餅として保たれる。一人暮らしの長い私は揚げ餅になっていますが、実家に戻ると、どうでしょうね」(中村真理子)=朝日新聞2019年11月20日掲載

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