安倍晋三首相が昨年末の記者会見で、憲法改正を「必ずや私の手で成し遂げていきたい」と言い切ったことが波紋を広げている。自民党総裁としての任期が残り2年足らずとなり、改憲スケジュールがタイトになる中、発言を「4選を果たした上で改憲を達成する意欲の表れ」(首相周辺)と受け取る向きがあるからだ。首相の盟友・麻生太郎副総理兼財務相が首相に4選の覚悟を求める発言をしたことも憶測を広げた。令和の時代、前人未踏の「4選宰相」は誕生するのか。
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昨年12月9日夕、濃紺のスーツを身にまとって記者会見に臨んだ首相は、引き締まった表情で熱弁を振るっていた。
記者「任期中の憲法改正の目標は引き続き掲げていくのか」
首相「憲法改正に向けた歩みを一歩一歩着実に進めていきたい」
身ぶり手ぶりを交えながら、思いを語った首相は質問をこう締めくくった。
「憲法改正は決してたやすい道ではないが、必ずや私たちの手で、私の手で成し遂げていきたい。こう考えている」
改憲は誰の手にも委ねず、首相自らが成し遂げる-。発言は瞬く間に永田町に憶測を伴って駆けめぐった。
ある政府高官は「今までと言っていることは変わらない。そんなに意味はないだろう」と打ち消したが、首相に近い別の関係者は「4選の意欲の表れだ。首相は65歳と年齢が若く、気力も十分。改憲は自らの手で解決させるつもりだ」と胸中を読んでみせた。
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首相の「4選論」は、これまでも政府・与党の有力者らが容認する声があがっていた。いち早く首相の4選を唱えたのが、もともとは「連続2期6年」とされていた総裁任期延長の党則改正を主導し、首相3選の立役者となった二階俊博幹事長だ。
二階氏は首相のこれまでの実績を踏まえ、「『4選どうぞ』と言うのは当たり前だ。国民の人気もあるわけだから、ご本人が決断すれば党は全面的に支持したい」と語り、4選を公然と支持してきた。
甘利明税制調査会長も11月、首相が信頼関係を築いたトランプ米大統領や関係正常化に腐心してきた中国の習近平国家主席らの名前を挙げた上で、「強烈な個性の指導者とそれ以外をうまくつなぎ、世界をまとめていける人はなかなかいない。一番役割が期待されているのは安倍首相だ」と4選に含みを持たせた。
さらに、4選に関して沈黙を守ってきた麻生氏が月刊誌「文芸春秋」のインタビューで「本気で憲法改正をやるなら、総裁4選も辞さない覚悟が求められる」と発言。発売日は首相の会見翌日の昨年12月10日だった。
菅義偉官房長官とともに、平成24年に発足した第2次安倍政権を支えてきた盟友の言葉は重みがあり、4選論に拍車をかけることになった。麻生氏はインタビューで「国政選挙に6連勝した安倍政権が(改憲を)やらなければ、いつやるのか」とも強調した。
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もっとも、首相自身は4選そのものについて「光栄だが、考えていない」と否定する。それでも政府・与党内で首相の4選を求める声が引きも切らないのは、明確な「ポスト安倍」候補の不在だ。
昨年12月の産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、次の首相にふさわしい政治家を尋ねたところ、自民党の石破茂元幹事長が18・5%で首相の18・2%を僅差で上回ったが、自民党支持層に限った場合、首相は34・4%を集め、20・6%の石破氏を逆転した。
党総裁は所属する国会議員票と党員・党友票で選ばれるが、自民党支持層のポスト安倍の「本命」は今なお首相というわけだ。
一方、新元号の発表役を務め、「令和おじさん」として存在感を高めつつあった菅氏の支持率は昨年9月調査の6・3%から3・0%に急落した。菅氏に近い2閣僚の辞任や「桜を見る会」に関する疑惑での答弁のぶれが影響したとみられる。首相の意中の後継者と目される岸田文雄政調会長は2・7%に止まっている。
首相4選論は、ポスト安倍を見いだせずにいる党内の深刻な現状の裏返しとも言えそうだ。
(政治部 永原慎吾)
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January 03, 2020 at 11:00PM
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