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タトゥーだらけの元夜の女と借金まみれのラッパー崩れ…私たちが夫婦になったわけ - 読売新聞

 家族も友達もいない東京で子育てに奮闘するアッコさんにとって、唯一無二の心の支えとなっているのが最愛の夫です。「頼りになる」「優しい」「家事や子育てに積極的に参加する」……世の中の“よき夫”像にはいろいろなタイプがありますが、アッコさんにとって、ある思いを共有していることが、頑張れる理由になっているのだとか。人気連載「元ヤン子育て日記@TOKYO」。今回は連載でもちょくちょく登場する不思議な夫についての話です。

 会社勤めをする夫は、出張のたびに必ず、「面倒くさいし、行きたくない」とぼやきを入れる。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する前の北海道出張(しかも1週間!)の時もそうだった。いつも通り「飛行機、嫌なんだよなぁ」と背中を丸めながら家を出て行ったのだが、私は、この出張を夫が心底楽しみにしていたことを知っていた。
 出張に行きたくない素振(そぶ)りをするのは、ヤツなりに編み出した私を刺激しない作戦なのだ。だって、私たちは夫婦で飛行機に乗って旅行したことが一度もないのだから……。

 我が家には本当にお金がない。
 結婚式もなし、新婚旅行もなし。プロポーズのディナーも、婚約指輪も、結婚指輪すらもなかった。これで「北海道出張、イエ~イ」なんて言おうもんなら、私から「私も飛行機に乗って旅行したい!」と毒づかれること間違いない。結婚して約2年。私を刺激しないために身につけた夫なりの処世術なのだ。

 うるさいなぁ、もう分かったよ……と思いつつ、玄関先から娘と見送る私。あんな夫だが、いなくなると少し心細かったりする私の気持ちに、彼は気づいているのだろうか。

 出会いは地元の夜の店。夫は私の客で、行きつけのバーが一緒だったことで意気投合した。

 ラッパー、スケーター、デザイナー……(全て自称)。そこは不良のたまり場で、朝になれば覚えていないような話題で毎晩、大盛り上がりだった。夫はその中では会社員というより、「ラッパー崩れ」。バーのマスターから、4大卒と聞かされても、特段、何も感じることはなかった。

 当時の私の生活はかなりすさんでいた。気が向いた時に夜の店に出勤し、そうでなければ夜遊びへ。日を追うごとにタトゥーと職業不詳の友達ばかりが増えていく。勉強をして大学を出ていれば、就職する年頃だというのに……。

 そんな毎日にウンザリしていた私はある日、この生活から抜け出す革命的な方法を思いついた。
 海外移住だ。「日本は私に合わない! 海外なら私の才能が開花するはず!」と……。

 ただ、当時の私が知っている言葉は「ハロー」だけ。自分の周りで英語がしゃべれそうなのは……。アイツだ。

 早速、電話で「会いたい」と連絡を取り、夫の家に中学生用のドリルを持参して、「英語を教えてほしい」と直談判。夫は私の話を聞き、苦笑いを浮かべながらこう言った。

 「人生を変えたいなら、英語より昼の仕事したら?」

 なるほど。時間がかかる英語より、まず昼の仕事か。その発想はなかった。
 「コイツは頼りになりそう」と思い、嫌がる夫をよそ目に、私はその日から夫の家に居候することにした。次の日には水商売を辞め、就活を開始。なんとかアパレル会社に就職し、付き合ってもいない夫の家から職場へ通う、「自分を変えるための生活」が始まった。

 実は夫も夫で、当時は苦しんでいた。仕事に行き詰まり、その反動からか、仕事が終われば毎日酒を飲みに行き、周りの初対面の若者たちに酒をおごってドンチャン騒ぎ。しまいには「ラップでメシを食っていく」とか言って、ラップバトルの大会に出てみたり……。パチンコや競馬にのめり込んで多額の借金も抱え、荒れ果てた生活を送っていた。

 でも、そんなダメ男だったからこそ、私を受け入れてくれたのかもしれない。同棲生活が始まってから、私は昼の仕事に奮闘し、夫も酒を飲み歩くのをやめた。途中、私が「好きだ」と伝えても、「タトゥーも入ってるし、元々、夜の女だからなぁ……」と言われて、フラれる事件があったものの、生活は変わらない。2人とも朝から晩まで仕事に打ち込んだ。

 そんな風変わりな同棲生活も2年が()ち、夫の仕事の調子が上を向いてくると、東京への転勤話もちらほら(うわさ)に聞こえてきた。

 昔、フラれていたこともあり、「ここで終わりかな」と内心思っていた。でもある日、2人でスイカを食べていた時のこと。夫はスイカの種を口からプっと吹き出して「結婚しようか」と聞いてきた。私は婚姻届へサインした。

 タトゥーだらけで学歴もない妻、借金まみれの夫。端から見ると、ちゃんとした家庭を築けるのか不安になりそうな夫婦だし、生まれてくる子どもはどうなるの、なんて声も聞こえてこないこともない。
 ただ、一つ言えるのは、私たちは自分たちが「足りてないこと」を知っている。足りてない分だけ、汗をかかなくてはならないと分かっている。娘が生まれ、出産を見届けた夫は、1時間後には仕事をしていた。私はオシャレも遊びも忘れて、子育てに家中を走り回る。泥臭く必死に生きるしかない。

 ちなみに夫がこさえた借金はまだまだ返済中。「来月も苦しいなぁ」とため息交じりに家計簿とにらめっこしているとき、夫はターンテーブルで娘にヒップホップを聴かせている。娘は夫の横に立って、音に合わせて首をガンガン振りながら、「アンパンマン!」とリクエスト。夫は「OK!」なんて言いながらホーンを鳴らす。うるせー!

 正直、海外移住やセレブ生活への憧れがないわけじゃない。でも、“足りない者同士”の結婚生活もそれはそれで、変化に富んでいて悪くはないかな、とも思う。

 筆者(アッコさん)プロフィル
 1993年生まれの26歳。中部地方出身。中学時代は「学校がつまらない」と授業をサボり、成績はオール1。その後、私立の専修学校に進学するも不真面目な素行に加え、成績もふるわず、ヤンキーへの道一直線。卒業後、一度は医療事務の仕事に就いたが、遊びたい気持ちを抑えられず退職。職を転々としていたところ、会社勤めをする夫と出会う。都内で夫と1歳の長女と3人暮らし。

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May 28, 2020 at 08:13AM
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