◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[脱線] 三重県松阪市・主婦・61歳 小山肇美
わたしは、休日の朝にゆったりと珈琲(コーヒー)を淹(い)れます。朝日がまぶしい窓辺でね。好みの豆を手で挽(ひ)いていると、もう香りがあたりに漂うわけです。
豆が粉になったら、フランネルの袋に入れて。でね、しゅんしゅんと沸かした湯です。注ぎ口の細長いケトルでね、少量を注ぐんです。
珈琲豆を蒸らす。ここが、重要なポイントですよ。蒸らしが終わったら、湯を細い糸を垂らすように注ぐ。銀色の蜘蛛(くも)の糸でも垂らすようにね、ゆっくり、ゆっくり。
鼻腔(びこう)に広がる香り、湯気をこう胸いっぱいに吸い込む。
想像できますか?
これぞ、休日の朝という幸福感に包まれていますか?
…こう話してくれたのは、名前も顔も授業の内容も忘れてしまった『文学』の先生です。
<評> 「教育とは、学校で習ったすべてを忘れた後に残るもの」とアインシュタインは言ったそうです。だとすれば、これなど、まさしく本物の授業。横道へ外れた先は、学生の心に沁(し)みる香ばしい珈琲談議。
[きみが為] 東京都練馬区・パート・20歳 若田部愛
明日の洋服はどんな組み合わせにしよう、とか…口紅は何色を塗ろう、とか…迷ったときは散歩に出る。
その日咲いている花、日が沈む前の空のコントラスト、それらはとても魅力的で幻想的だ。
誰もが惹(ひ)かれるその色は、私にヒントを与えてくれるのだ。
一見合わなそうな色だと思っても、自然の中で見つけてしまえば、誰かが立ち止まって見つめていたならば、その色合いはとても魅力的だと確信を持つ。
「そのマフラー、良い色だね」
「そうでしょ。昨日見た夕焼けが、こんな色だったんだよ」
「本当に綺麗(きれい)だ」
「うん」
だから早く二人で見にいこう。何度飲み込んだか分からないこの言葉を胸に、今日も散歩に出る。
明日、身に纏(まと)う色を探しに。
<評> ファッション誌のスタイリストさんが選んだ流行のコーディネートより、日々変化する自然を参考にセレクトした、自分だけの色づかい。そこに込めたメッセージを、早く読み解いてほしいのですが…。
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December 13, 2020 at 06:15AM
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