冷戦後の世界を席巻しているグローバリズムは、新型コロナウイルスの直撃を受けつつも、現代文明の一大潮流であり続けている。
日本としては今後も引き続き、この欧米発のグローバリズムと対決して、ナショナル・アイデンティティーとの統合を目指さなければならない。
そもそも、明治の文明開化以来、西洋発のグローバル・スタンダードと日本的価値とを調停しながら、自己の主体性を確保することが、わが国に一貫するところの課題であった。
そして、この課題を引き受けようとする人々が、「保守」と称されてきた。
戦後日本を代表する思想家・福田恆存(つねあり)は、まさに、この意味の「保守」を体現している人物だ。
その福田は、生前に、自らの『全集』、『著作集』が刊行された際、各巻末に「覚書」、「後書」を付記し、それまでの人生の歩みと仕事を回顧している。
それらの文章を集成して、一冊の自伝にまとめ上げたのが、本書である。
本書を通して浮かび上がってくるのは、欧米近代主義の模倣を良しとする戦後日本の風潮と対峙(たいじ)して、一歩も引かなかった福田の姿である。
その独り立つ武士のような姿が、全編を通して実に生き生きと伝わってくる。
この自伝の中で福田は、欧米流の近代主義に帰依する進歩的知識人に対して次のように述べている。「彼等と私との間で人間観が異なつてゐるのではなく、私は人間観から出発してゐるのに、彼等はそこを素通りしてゐるのである。私にいはせれば、彼等に人間観はない、あるひは、それに関心をもたないといふことになる」。また、彼らに対する反発は「私の人間観、歴史観に基づくものであり、私の道徳観、文化感覚より発するものである」。
現代の日本人が、グローバリズムに翻弄され、主体性を見失いつつあるのも、福田の言う人間観、歴史観、道徳観、文化感覚を喪失してしまっているからであろう。
『私の人間論』と題された、この福田の自伝は、極めて現代的な意味をもって、私たちの前に立ち現れているといえる。(ビジネス社・1800円+税)
評・川久保剛(麗澤大大学院准教授)
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December 13, 2020 at 05:30AM
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【書評】『私の人間論 -福田恆存覚書-』福田恆存著 「保守」体現の思想家自伝 - 産経ニュース
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