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濁流が奪った「私の人生そのもの」 土地去る苦渋の決断 - 朝日新聞デジタル版

 去るか、残るか。昨年10月の台風19号による豪雨で千曲川の堤防が決壊し、大きな被害を受けた長野市長沼地区の住民たちに、重い問いが突きつけられています。コミュニティーの担い手が減りゆく被災地の現状を報告し、その将来像を考えます。

「離れたくない」 それでも迫っていた期限

 土の上で身をかがめ、葉をかき分ける。まるまる育ったナスを、慣れた手つきで一つひとつ採っていく。

 10月上旬、長野市長沼地区にある約50平方メートルの野菜畑で、松沢糸江さん(81)が収穫にいそしんでいた。半世紀前から付き合ってきた土地。乾いた土のにおい、まぶしい葉の緑、つるんとしたナスの手触り。いつもと変わらない。

拡大する写真・図版半世紀世話した畑で採れたナスと大根を持つ松沢糸江さん=長野市津野

 それなのに。松沢さんはふと手を止め、こうつぶやいた。「ここももう、人に貸さなくちゃね」。先月、長沼を去ると決めたのだ。

 昨年10月13日未明。家から250メートルほど離れた千曲川の堤防が決壊し、畑は高さ約1・5メートルの濁流にさらされた。野菜は流され、近くの自宅は1階に泥が流れ込み、全壊した。

 前夜から避難していた松沢さん…

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