令和2年4月24日
和山アマンダ
岩手県商工労働観光部観光・プロモーション室 主任
イーハトーブとの出逢い
私は,JETプログラム(注)の国際交流員として内定通知書が届いた日が忘れられません。
「やっほー!JET内定!最高にうれしい!しかも,配属地は…? えーと…イワテっていうところだけど,どこだっけ」
お恥ずかしい話ですが,青森県や秋田県は聞いたことがあったものの,岩手県というところは全く聞いたことのなかったのです。
寒さが苦手だった私は,すこし不安を抱きながら,「岩手県」へ。
あれから10数年。
岩手という地で,生き甲斐を見つけ,ずっと残ることと決意をしました。
つまり,自分にとっての「イーハトーブ」に出逢ったわけです。
(注)JETプログラム
地方公共団体が総務省,外務省,文部科学省及び財団法人自治体国際化協会 (CLAIR)の協力の下に実施する事業であり,外国から青年が招待され,学校や地方公共団体の国際交流担当部局等に配置されることにより,外国語教育向上や国際交流等を図ります。
イーハトーブとは
「イーハトーブ」とは何かというと,岩手県出身の宮沢賢治による造語で,心象世界にある理想郷を指す言葉です。「理想郷」とは何か,当初は私には分からなかったものですが,岩手県にいればいるほど,「岩手県は私にとっての理想郷だ」との確信が強くなってきました。
- 岩手には,
- ・山々に囲まれ,美しい海,広々とした草原など豊かな自然がある
- ・山の幸,海の幸に恵まれた食文化
- ・迫力と鮮やかさが兼ね備えた祭りや伝統芸能
- ・昔から引き継がれてきた職人技と伝統工芸品
- など,魅力が数えられないほどありますが,それだけではありません。
私にとっての「イーハトーブ」は,もっとシンプルなものです。
岩手のヒトです。
「岩手の県民性」というものかもしれません。もちろん,岩手県民といえば,ちょっとシャイなところがありますが,お客さんへのおもてなしの心にあふれています。また,2011年の東日本大震災津波をはじめ,2016年台風10号や2019年台風19号から受けた甚大な被害に立ち向かって,ふるさとの復興に力強く取り組んでいます。その「粘り強さ」を尊敬しています。
そんな岩手県民は,私が来県した最初の日から,フレンドリーに迎えてくれて,岩手県の社会の一員として受け入れてくれました。
だから私は,岩手県の豊かな自然や歴史文化に加え,ぜひ岩手県のヒトを世界に向けて発信したいのです。
海外向け情報発信の一例
私は2009年から岩手県庁に勤務し,この5年間は,海外向け情報発信を担当してきました。SNSを活用した英語による魅力発信や,パンフレットのネイティブチェックなどを行いましたが,その中から一つの例をご紹介したいと思います。
経験から言わせていただくと,海外情報発信は決して容易なことではありません。岩手県をはじめ,知名度の低い地方について,パンフレットを数多く発行し,SNSを毎日のように更新しても,キーワードである「IWATE」が世界的な流行語にならないと,なかなか相手に届けることができません。また,様々な魅力について日本語による素敵な原稿があっても,多言語に訳すことで,言葉や表現のギャップが生まれ,魅力を伝えきれないケースが多いと思われます。また,情報発信の成功例から学ぶことが大事ですが,事業をあまりにもマネしては,SNSという「アテンション・エコノミー」では目立つことができません。
そのため,私は,直接英語で,何らかの珍しい方法で,岩手県の知名度を上げることができないかなと思いました。そこから,PEOPLE OF IWATEというブログが生まれました。
その時まで,観光ホームページやパンフレットには,「景色」や「グルメ」,「アクティビティ」などの紹介が多かったですが,私にとっての「イーハトーブ」,つまり,岩手のヒトの魅力があまり反映されていないと感じました。各地で努力している岩手県民をインタビューし,インタビュー内容のエッセンスを絞って面白く英語で発信することにより,岩手県民という最大の魅力をより広く広めることができると考え,企画を立てました。
上記のブログでは,約70名とのインタビューが掲載されています。生まれ育ちも岩手県民の方もいれば,U・Iターンの方も,外国の方もいます。地方活性化に携わっている方も,大震災からの復興に携わっている方もいます。それぞれの方に,仕事や生き甲斐,故郷への思いなどを聞いてきました。私は,あまり大したインタビュー力を持っていませんが,微力ながらも,皆様が言いたいことを世界に向けてきちんと伝えるように一生懸命に頑張りました。これで,私も「岩手県民性」もより理解できるようになったのではないかと思います。この企画にご参加いただいた方々に対し,深く感謝申し上げます。
海外向け情報発信で,私が目指していることは,何よりも人と人の絆を築いていきたいということです。もし海外の方が岩手県民のことを知れば,会ってみたくなるかもしれません。そう思ってくれるように,魅力をしっかりと発信していきたいと思います。岩手県に来る外国人は,私と同じく,全員が岩手県を好きになります。来てもらうような動機付けだけが必要なのです。
今後に向けて
令和2年度4月から別の所属に異動し,仕事内容が海外向け情報発信から,国内外に向けたプロモーションになりました。しかし,異動後でも,岩手県民の紹介を含めた情報発信に引き続き関わっていきたいと考えています。また,PEOPLE OF IWATEで築いた貴重なネットワークを活用し,国内外のプロモーションにも役立てるのではないかと思っています。
最近は,新型コロナウイルスの感染拡大により,緊急事態宣言の対象が全国に広がった中,不安を抱いている国民が少なくないと存じます。今は,「イーハトーブ」にできることが少ないものですが,国内外の岩手ファンを増やし,いつか,終息のあかつきには,皆様が安心してこられますよう,岩手県民の紹介を含め,面白く楽しく,私にとっての「イーハトーブ」を発信していきたいと思います。
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April 24, 2020 at 05:13PM
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私の心の中の『イーハトーブ』|外務省 - Ministry of Foreign Affairs of Japan
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